ガリレオ衛星は木星の周りを公転する4つの衛星で、その名の通り天文学者「ガリレオ・ガリレイ」によって発見されました。
ガリレオ衛星最大の特徴は「大きさ」であり、太陽系の中でも群を抜いてサイズが大きな衛星として有名です。
しかし、ガリレオ衛星の特記すべき点は大きさだけではありません。
中には、生命存在の可能性、他の衛星では見られない唯一無二の特徴もあるのです。
今回は、木星を公転する4つの「ガリレオ衛星」の特徴や雑学を詳しく解説します。
木星の衛星「ガリレオ衛星」とは?
ガリレオ衛星は、木星の周りを公転する4つの衛星を指します。
4つのガリレオ衛星
- イオ
- エウロパ
- ガニメデ
- カリスト
ガリレオ衛星はその名の通り、天文学者「ガリレオ・ガリレイ」によって発見されました。
初めてガリレオ衛星が観測されたのは、1610年の1月とされていて
月以外で初めて天体の周りを公転している事が発見された天体でした。
木星には95個もの衛星が発見されていますが、その中でもガリレオ衛星はサイズが大きな事で知られています。
大きさを含めて、ガリレオ衛星には1つ1つ特徴があるのでこの記事でご紹介したいと思います。
4つの「ガリレオ衛星」の特徴を解説
ここでは、4つのガリレオ衛星の特徴をご紹介します。
イオ
英語名 | Jupiter I Io |
明るさ | 5 等級 |
木星からの距離 | 約422,000 km |
直径 | 約 3,632 km |
質量 | 8.94 ×1022 kg |
重力 | 1.79 m/s2 (0.183 G) |
脱出速度 | 秒速 約2.6 km/s |
自転周期 | 1日 18時間 27.6 分 |
公転周期 | 1日 18時間 27.6 分 |
赤道傾斜角 | 約 1.54 度 |
表面温度 | 平均 -143℃ |
大気の量 | 少しある |
大気の主成分 | 二酸化硫黄 |
イオは木星の第1衛星で、ガリレオ衛星の中では最も木星に近い、内側を公転しています。
ガリレオ衛星の中では3番目の大きさで、太陽系の中では4番目に大きな衛星です。
イオの直径は月より5%ほど大きく、大きさは月とほとんど変わりません。
イオ最大の特徴は、多くの活火山がある事でしょう。
探査機が調査した結果、イオには400個ほどの活火山が確認され、太陽系で最も多くの活火山がある天体と言われています。
地表には多くの山が存在し、中にはエベレストを超える高さの山も存在するほど。
イオの活火山は木星からの強い引力(潮汐力)で発生していて、地球の活火山とはメカニズムが大きく異なります。
地球より重力が小さいので、火山で発生する噴煙は地表から500kmも高く舞い上がります。
活発な火山活動によって地表はドロドロの溶岩に覆われていて、クレーターがほとんどありません。
イオのチェックポイント
- 直径、質量が月に近い
- 400を超える活火山がある
- エベレストよりも高い山がある?
エウロパ
英語名 | Jupiter II Europa |
明るさ | 5.3 等級 |
木星からの距離 | 約 670,900 km |
直径 | 約 3,138 km |
質量 | 4.8 ×1022 kg |
重力 | 1.314 m/s2 (0.135 G) |
脱出速度 | 秒速 約2.025 km/s |
自転周期 | 3日 13時間 13.7 分 |
公転周期 | 3日 13時間 13.7 分 |
赤道傾斜角 | 約 0.1 度 |
表面温度 | 平均 -170℃ |
大気の量 | わずかにある |
大気の主成分 | 酸素 |
イオは木星の第2衛星で、イオの1つ外側を公転しています。
ガリレオ衛星の中でサイズは最小ですが、太陽系の中では6番目に大きな衛星です。
エウロパ最大の特徴は、地下にある内部海と、生命存在の可能性がある事でしょう。
エウロパは木星からの潮汐力によって、氷が溶けて内部海を形成しているかもしれないのです。
もし、エウロパに内部海が存在すれば、そこに生命が存在する可能性があります。
地表には大きな山や谷が無く、太陽系の天体の中で最も滑らかな表面を持つと言われています。
エウロパのチェックポイント
- 太陽系の天体の中で最も滑らかな表面を持っている
- 内部海が形成されている可能性がある
- 内部海に生命いるかもしれない
ガニメデ
英語名 | Jupiter III Ganymede |
明るさ | 4.6 等級 |
木星からの距離 | 約 1,070,000 km |
直径 | 約 5,262 km |
質量 | 1.49×1023 kg |
重力 | 1.42 m/s2 (0.1449 G) |
脱出速度 | 秒速 約2.741 km/s |
自転周期 | 7日3時間42.6分 |
公転周期 | 7日3時間42.6分 |
赤道傾斜角 | 約 0.3 度 |
表面温度 | 平均 -163℃ |
大気の量 | わずかにある |
大気の主成分 | 二酸化炭素 |
ガニメデは木星の第3衛星で、エウロパの外側を公転しています。
ガニメデは、ガリレオ衛星内で最大、太陽系の衛星の中でも最大の大きさを誇り直径は約 5,262 kmもあります。
ガニメデは直径約 5,262 kmであり、これは太陽系最大の衛星で、惑星である水星(4,879km)よりも大きいです。
ガニメデの構造は岩石半分、水(氷)が半分であり、水(氷)が占める割合がとても多いです。
そして、豊富な水の存在からガニメデの地下に広大な内部海があるかもしれません。
内部海の深さは100kmに及ぶ可能性があり、さながら海洋惑星を思わせるほど巨大な海洋を形成している可能性もあるのです。
もし、深さは100km級の海洋が存在すれば、地球の海より規模の大きな海洋を持っている事になります。
ちなみに、同じガリレオ衛星であるエウロパと比べると、生命存在の可能性は低いと考えられています。
ガニメデのチェックポイント
- 太陽系の最大の衛星
- 直径は水星よりも大きい
- 地下に広大な内部海があるかもしれない
カリスト
英語名 | Jupiter IV Callisto |
明るさ | 5.6 等級 |
木星からの距離 | 約 1,883,000 km |
直径 | 約 4,820 km |
質量 | 1.076 ×1023 kg |
重力 | 1.24 m/s2 (0.1265 G) |
脱出速度 | 秒速 約2.440 km/s |
自転周期 | 16日16時間32.2分 |
公転周期 | 16日16時間32.2分 |
赤道傾斜角 | 約 0 度 |
表面温度 | 平均 -153℃ |
大気の量 | わずかにある |
大気の主成分 | 二酸化炭素 |
カリストは木星の第4衛星で、ガリレオ衛星の中では一番外側を公転しています。
木星からやや距離が離れているため、他のガリレオ衛星と違って軌道共鳴を起こしていません。
地表は数多くのクレーターがある荒野が広がっていて、40億年間地表の様子は変わっていないと考えられています。
ガニメデと同じく、構造は岩石半分、水(氷)が半分であり水(氷)を占める割合がとても多いです。
カリストの地下にも深さ150〜200 km に及ぶ、広大な内部海が存在する可能性があります。
もし、内部海が存在すればそれはナトリウムが多く含まれる海水であるとされています。
しかし、カリストは木星から距離が離れているため潮汐力による熱源が乏しく、生命が存在する可能性は低いかもしれません。
カリストのチェックポイント
- 数多くのクレーターがある
- 地下に内部海があるかもしれない
- 木星探査の基地建設地の候補
ガリレオ衛星の雑学まとめ
ここでは、ガリレオ衛星に関する雑学をご紹介します。
名前の由来
ガリレオ衛星は全て、ギリシャ神話の登場人物から命名されています。
イオの由来
ギリシャ神話に登場するゼウスの恋人の1人、女神「イーオー」から
エウロパの由来
ギリシャ神話に登場するゼウスの恋人の1人、王女「エウローペー」から
ガニメデの由来
ギリシャ神話に登場するゼウスの側近「ガニュメーデース」から
カリストの由来
ギリシャ神話に登場するゼウスの愛人の1人「カリストー」から
なるほど。4つともゼウスと関係のある人たちが名前の由来になっているんですね。
ゼウスとは?
ゼウスはギリシャ神話における全知全能の神です。
木星の英語名である「ジェピター」と「ゼウス」は同一とされているので、ガリレオ衛星はゼウスと関係のある人物から命名されました。
地動説の根拠になった
今でこそ、地球は太陽の周りを回っている「地動説」が当たり前ですが
ガリレオ衛星が発見された1610年当時、地球は宇宙の中心にあり、太陽や木星を含めた他の天体は全て地球の周りを回っている「天動説」が信じられていました。
しかし、ガリレオ衛星を発見したガリレオ・ガリレイは「木星に衛星があると言う事は、地球より大きな太陽が地球の周りを回っている訳がない」と、地動説に確信を持ったとも言われています。
つまり、ガリレオ衛星の発見は「天動説」を否定する根拠の1つになったです。
ガリレオ・ガリレイの名言「それでも地球は回っている。」はガリレオ衛星が発見されたから生まれたと言っても良いでしょう。
なるほど、ガリレオ衛星って歴史を変えた発見だったんですね。
ガリレオ・ガリレイは「それでも地球は回っている。」を言っていないとの説があります。
本当の発見日は紀元前?
ガリレオ衛星の発見日は1610年とされていますが、もっと昔に発見されていた可能性があります。
紀元前364年、斉の天文学者の甘徳(かんとく)が「木星近くの暗い星を発見した」のと記述が残されているのです。
甘徳が見たのは、ガリレオ衛星で最も明るいガニメデではないかとの説があり、もしこれが本当ならばガリレオ・ガリレイよりもっと昔にガリレオ衛星が発見されていた事になります。
しかし、ガリレオ衛星は木星の明るさで肉眼での観察は不可能に近く、甘徳が観測したのはガリレオ衛星ではないとの意見があります。
甘徳(かんとく)が見た「木星近くの暗い星」の正体が何なのか?今でもはっきり分かっていません。
と言う事で、ガリレオ衛星の明確な発見日は1610年のままになっています。
全て潮汐ロックされている
先ほどの表を見て気付いた人もいると思いますが、ガリレオ衛星の自転&公転周期は完全に同期しています。
自転&公転周期が同期している事を「潮汐ロック」と呼び、ガリレオ衛星は木星から潮汐ロックされているのです。
潮汐ロックとは?
主星からの重力の影響を強く受けて、常に主星に同じ面を向けて公転している状態を潮汐ロックと呼びます。
主星の地表から潮汐ロックされた衛星を見ると、表面しか見えず衛星の裏側を見る事はできません。
分かりやすい例だと、月と地球の関係があります。
ラプラス共鳴
イオ、エウロパ、ガニメデの3つの公転周期には大きな特徴があります。
それは、イオが木星を2周した時エウロパが木星をぴったり1周する、イオが木星を4周した時ガニメデがぴったり1周する、と言う事です。
この、3つの衛星の公転周期が整数でぴったり一致する現状を「ラプラス共鳴」と呼びます。
ラプラス共鳴?どう言う事でしょうか?
ラプラス共鳴の例を見てみましょう。
↑3つの衛星が同じ位置でスタート(公転)するとします。
↑イオが1周した時、エウロパは0.5周、ガニメデは0.25周の状態。
↑イオがぴったり2周した時点で、エウロパはぴったり1周
↑イオがぴったり4周した時点で、ガニメデはぴったり1周
なぜこのような事が起きているのでしょうか?
詳しく説明すると長くなりますが「ラプラス共鳴」は、衛星同士の重力が影響しあう事で発生しています。
イオ=1、エウロパ=2、ガニメデ=4のように、簡単な整数比になっている例はガリレオ衛星だけです。
ちなみに、イラストでは3つの衛星が同時にスタートしていますが、実際は綺麗に並んで公転する事はありません。
まとめ
ガリレオ衛星は他の衛星に比べて調査が進んでいる天体ですが、探査機が直接地表に降りた事がないので、まだまだ分からない事が沢山あります。
エウロパ、ガニメデ、カリストの3つは内部海と生命の可能性に関しては、個人的に大きな期待を寄せています。
確かに!3つの衛星に海があるかもしれないってすごいですよね。
ぜひ、エウロパ、ガニメデ、カリストのどれかに生命が発見されてほしいと思います。
私もそう思います!ガリレオ衛星の今後の探査に期待しましょう。
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