木星の衛星「エウロパ」は生命存在が期待される天体の1つです。
しかし、エウロパは太陽から距離が離れているため、平均表面温度は−170度と極寒の世界。
さらに、オゾン層が無いため地表には大量の放射線が降り注いでいます。
過酷すぎて生命と無縁の環境に思える衛星「エウロパ」
なぜ、エウロパに生命存在の可能性があるのか?
もし、生命がいるとしたら一体どこに存在するのか?

今回は、木星の衛星「エウロパ」の生命の可能性について詳しく解説します。
そもそも、衛星「エウロパ」とは


主星 | 木星 |
直径 | 約3,121km |
表面温度 | 平均−170℃ |
太陽光 | 弱い直射日光 |
大気 | わずかにある |
大気圧 | − |
主な成分 | 水・酸素 |
その他、成分 | − |
エウロパは木星の第2衛星で、木星の4大衛星である「ガリレオ衛星」の1つです。
直径は3121kmであり、月の直径3474kmより少し小さいサイズです。
表面は水の氷で覆われていて、山や谷などの地形に乏しく、なめらかな大地が広がっています。
大気は存在しますが、大気圧は地球の10の−12乗と非常に希薄で、表面はほぼ真空の状態。
太陽からの距離は約7億7800万kmも離れているので、表面温度は高いところで−148度、低いところで−223度と極寒の世界です。
(地球から太陽からの距離は1億4960万km)
エウロパの生命存在の根拠とは?


エウロパに生命存在が指摘される4つの理由
- 液体の水がある?
- 熱エネルギーがある?
- 酸素の存在を確認
- 有機物の可能性



ここからは、上記の4つについて詳しく解説します。
「液体の水」が地下にある?





エウロパの表面は厚さ100kmほどの氷で覆われていますが、地下に液体の海が存在すると言われています。
海の深さは約170Kmとも



エウロパに生命がいるとしたら、地下の内部海に存在する可能性が高いです。



なるほど!でも、エウロパはすごく寒いのになぜ液体の海が存在するの?
潮汐力で氷を溶かす



内部海が形成される秘密は、木星&エウロパとの間で発生する「潮汐力」によるものです。
潮汐力(ちょうせきりょく)とは
簡単に説明すると、木星の重力によって発生する「押す力&引く力」です。
エウロパは木星の周りを回っているのですが、場所によって発生する重力のパワーが異なります。
例として
- A地点の重力は10
- B地点の重力は8
だとします。


エウロパがA地点に存在すると、木星の重力10によって引っ張られるパワーが発生します。


そして、B地点に移動すると重力8の影響を受けます。
重力8になると、重力10より引っ張られるパワーが弱いので「10−8=2」で、2の重力分戻る力が発生します。





↑この、木星&エウロパ間で発生している、引っ張る&戻るの繰り返しが「潮汐力」なのです。



そして、この「潮汐力」で発生したエネルギーが熱源となり、氷を溶かして海を形成してるのです。
ちなみに「木星&エウロパ」に働く潮汐力は「地球&月」の1000倍ほど。
ここまでの潮汐力になる理由は、親である木星の重力&質量が大きいからです。
液体の水の重要な根拠



エウロパの「地面の移動」を確認したことで、液体の水の存在が確実視されました。
地面の移動とは
地殻の回転と言われ、正式名称は「真の極移動」です。
ざっくり説明すると、地表から地殻の中心部分までカチカチの硬い物質で構成されていたら、地面が移動することはありません。
しかし、地表と地殻の中心部分の間に「液体」が存在すると、なにかの拍子で地面が動くことがあるのです。
地表と地殻の中心部分の間に液体が存在することで発生する「動き」こそ「地面の移動」なのです。





↑なるほど、地面が動いていることが、液体の海の存在を証明しているってことね?



その通り!エウロパは水の氷で構成されていなならば、その液体は「水」以外に考えられないのです。
「熱エネルギー」がある?


もちろん、液体の水があるだけでは生命は誕生しません。
生命誕生の大事な要素の1つが「熱エネルギー」です。



エウロパの表面は100Kmに及ぶ厚い氷で覆われているので、太陽エネルギーは期待できません。



そのため、太陽光に変わる熱エネルギーに頼る必要があるのです。
太陽光に変わる熱エネルギーとは?
地球上では「熱水噴出孔」と呼ばれる海底の熱エネルギーが存在し、熱水噴出孔に頼る生命が存在します。
エウロパにも熱水噴出孔の様な海底の熱エネルギーが存在し、太陽光を必要としない生命が存在するのではないか?と考えられています。



「熱水噴出孔」って、以前見た記事にもありましたよね?



内部海と熱水噴出孔は、土星の衛星「エンケラドゥス」と共通しています。


「酸素」の存在を確認



酸素があるって地球みたいですね?



酸素の発見によって、エウロパの生命存在の可能性はさらに高くなりました。
エウロパに酸素が存在する理由
エウロパにはオゾン層が存在しないので、地表には強い放射線が降り注いでいます。
しかし、この強い放射線のおかげて「放射線分解」が発生しています。
放射線分解とは
ある物質に放射線が当たると、化学接合を破壊してしまう現象のことを「放射線分解」と言います。
エウロパの水に強い放射線が当たることで、酸素と水素に分解され酸素が生成されていると考えられています。





発生起源はともかく、酸素は生命誕生に有利な成分であることに変わりはありません。
「有機物」は未発見だけど
ここまで「水」「熱エネルギー」「大気」と生命誕生に必要な要素をご紹介しましたが、有機物は未発見です。
有機物は生命誕生になくてはならない成分なので、有機物未発見のエウロパでは生命がいると断言できないのです。



しかし、エウロパには有機物の可能性は発見されています。
小天体の衝突=有機物?
エウロパには小天体が衝突した形跡が発見されています。
小天体は有機物も一緒に運んでくれる可能性があるので、現状有機物が未発見でも今後の探査によって有機物が発見されるかもしれません。



エウロパに有機物が発見されれば、生命誕生に必要な条件が全て揃うことになります。
そして、エウロパの生命とは?
現状、衛星エウロパの生命は未発見です。
しかし、生命にとって有利な条件が発見されているので、今後の探査で生命が発見されてもおかしくありません。
ただ、衛星エウロパは地球に比べると過酷な環境であるため、地球上で見かける大型生物はいないと言われています。



エウロパに生命がいたとしても、顕微鏡レベルの微生物しかいないかもしれません。



魚や甲殻類みたいな生命は期待しないほうが良いってことね?
生命存在の大きなハードル


もちろん、エウロパには生命にとって不利な要素もあります。



最大のハードルは、オゾン層がないので非常に強い放射線が降り注いでいることです。
エウロパ地表に降り注ぐ放射線の量は1日5400mシーベルトであり、これは地球上の100万倍の放射線量です。
人が1日3000〜5000mシーベルトの放射線を浴びると50%の確率で死亡するので、いかに強い放射線が放り注いでいるかが分かります。
内部海が厚い氷で覆われていても、ここまで強い放射線が降り注ぐ環境下で生命が存在できるのか?詳しく分かっていません。
衛星エウロパの探査について





なんか、このイラスト見ただけで生命がいそう!
(想像図ですが)



EJSMと呼ばれる探査計画が進行中です。
エウロパ・ジェピター・システム・ミッション(通称:EJSM )
EJSMはエウロパの内部海の直接探査を行うミッションです。
計画内容の一部は
- エウロパの内部海の存在の調査
- 地表の構造物、化学的性質の調査
- 外気圏、プラズマ環境、磁場の調査
などです。



EJSMの開始時期は未定ですが、ぜひエウロパに生命が発見されてほしいと思っています!



EJSM!楽しみにしています!




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