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“トロッコ問題”を分かりやすく解説!1人が犠牲?5人が犠牲?どちらを選ぶ?

「ある人を助けるために、誰かを犠牲にする行為は正しいのか?」

この問題に、すぐに自分なりの答えを出せる人はどれだけいるでしょうか。

トロッコ問題とは、だれかが必ず犠牲になってしまう状況で、自分ならどう考えるか?どう行動するか?に向き合う思考実験です。

思考実験なので、答えはありません。

パラバース博士

この記事を読めば、トロッコ問題とその派生、歩道橋問題について大まかに理解できます。

パラバース博士

自分ならどのような選択をするか?
考えながら読んでみて下さい。

目次

トロッコ問題とは?

トロッコ問題は、イギリスの女性哲学者であるフィリッパ・フットが1967年に提唱しました。

もともとは、フットが発表した『中絶問題と二重結果論』という、中絶問題を考える論文の中の例文でした。

概要

線路上を走るトロッコが制御不能になった。

このままでは、線路の先にいる5人の作業員が犠牲になる。

あなたは、5人の作業員の手前に線路の分岐点がある。

分岐点はレバーを操作することでトロッコの進路を切り替えることが出来る。

しかし、切り替えた先の線路上には別の作業員1人がいて、トロッコの進路を切り替えればその1人が犠牲になる。

この時、トロッコの進路を切り替えるべきだろうか?

このときの選択肢は次の2つしかありません。

  1. レバーを切り替える
  2. レバーを切り替えない(何もしない)

そのほかに全員助ける方法や、トロッコを止めるなどの方法はないものとします。

また、犠牲になるかもしれない1人と5人の年齢や性別、犯罪歴などは考えないものとします。

さて、どちらを選びますか?

回答と、ある統計結果

切り替える人も、切り替えない人もいるでしょう。

ある調査によると85%以上の人が、レバーを操作し1人を犠牲にする選択をするそうです。

「トロッコ問題」の問題点や矛盾とは

トロッコ問題を考える時、次のようなことが論点となります。

人の命を「人数」で決めて良いのか?

レバーを切り替えることで、犠牲者の数が5人から1人に減りますが、犠牲者の人数が少ないことが正しいのでしょうか?

15%の人はレバーを切り替えない選択をするという統計がありますが、ではこれが1人と100人だったらどうでしょうか?

500人なら?1,000人なら?選択は変わるでしょうか?

「放置」は悪か?正義か?

切り替える選択は、自らの意志による行動だから「悪い選択」なのでしょうか?

切り替えない選択は、自然の摂理に乗っ取った行為だから「良い選択」なのでしょうか?

「悪人」だから死んで良いのか?

トロッコ問題は、犠牲になるかもしれない1人と5人について年齢や性別、犯罪歴などを考慮しない思考実験ですが、これが例えば以下のような選択肢ならどうでしょうか。

レバーを切り替えない → トロッコの先にいる、罪のない人が犠牲になる
レバーを切り替える → 線路を切り替えた先の、犯罪者が犠牲になる

犠牲になるのは罪のない人よりも犯罪者の方が良いという理由で、レバーを切り替えるでしょうか?

そして、その犯罪の程度はどうでしょうか?

殺人犯だったら?万引き犯だったら?選択は変わるでしょうか?

「トロッコ問題」の派生、「歩道橋問題」

トロッコ問題と似たものに、「歩道橋問題」というものがあります。

あなたは歩道橋の上にいる。

歩道橋の下には、トロッコ問題と同じように制御不能のトロッコが走っていて、その先には5人の作業員がいる。

あなたの隣には1人の作業員がいて、歩道橋の下にその作業員を線路上に突き落とせば、

作業員が障害物となってトロッコが止まり、5人の作業員は助かる。

この時、作業員を突き落とすべきだろうか?

トロッコ問題では85%以上の人がレバーを操作して1人を犠牲にする選択をしますが、

この問題では75~90%の人が、作業員を突き落とさず5人を犠牲にする選択をするそうです。

トロッコ問題と、回答の割合が逆転するのはなぜ?

選択の結果はトロッコ問題と同じはずなのに、歩道橋問題の方では5人を犠牲にする選択肢を取る人が増えます。

つまり、トロッコ問題ではレバーを操作して1人を犠牲にし5人を助けた人のなかで、歩道橋問題では作業員を歩道橋から突き落とし5人を助ける選択をしない人がいるのです。

“レバーを操作する”ことよりも、“歩道橋から突き落とす”ことのほうが心理的に負担になると考えることが出来そうです。

レバーを操作して1人を犠牲にする行為は間接的で、作業員1人を突き落として犠牲にする行為は直接的だと、直感的に感じる人が多いのではないでしょうか。

パラバース博士

ただし、これはあくまでも私の見解です。
思考実験には、答えがないのですから。

「トロッコ問題」AIはどう判断する?

トロッコ問題は、車の自動運転でAIが使われている昨今、再度注目されています。

自動運転の車で事故が起きそうなとき、AIはハンドルを切るべきか?ということです。

例えば、次のような状況を考えてみます。

車の進路には、ヘルメットをしていない人がいます。

ブレーキは間に合わず、衝突を免れるためにはハンドルを切って進路を変えなければいけません。

ですが、進路を切り替えた先には人がいます。この人はヘルメットをしています。

ヘルメットをしている人の方向へハンドルを切れば、このままヘルメットをしていない人の方向へ突っ込むよりも、人が死ぬ可能性は低くなります。

しかし、ヘルメットを被って法律を守っている人が、遭うはずのなかった事故に遭ってしまうことになります。

AIは、どちらの選択をするべきなのでしょうか?

ドライバー優先になる

つぎのような状況ではどうでしょうか?

車の進行方向には5人の歩行者がいて、ブレーキは間に合いません。

ハンドルを切って回避するしかありませんが、ハンドルを切った先は崖になっていて、ドライバーは犠牲になります。

犠牲者の人数だけ考えれば、ドライバーが犠牲になる方が被害は少なくなりますが、そのような車を買いたいと思うひとは少ないでしょう。

つまり、未来のA Iの自動運転は「ドライバー有利」に設定される可能性が高いのです。

トロッコ問題には全員助かる方法があった?

トロッコ問題は前提として、①1人を救って5人を犠牲にする ②5人を救って1人を犠牲にする 以外の選択肢はないものとする、という思考実験ではありますが、第3の選択肢、つまり全員を救うという選択肢を示したツイートがTwitterでバズり、TVにも取り上げられて話題になりました。

トロッコの前輪が、切り替えポイントに差し掛かってすぐにレバーを切り替え、前輪と後輪を別の線路へ進めることでトロッコは先に進めなくなって止まります。

パラバース博士

「これこそが最適解だ」「一番平和な結果だ」と話題になりました。

まとめ

トロッコ問題には正解がありません。

ですが、AIによる自動運転が導入されることを考えると、現代の私たちには決して他人ごとではありません。

自動運転のAIが、どちらの命を取るか決めなければいけないという状況が必ずきます。

パラバース博士

ただの思考実験としてではなく、より身近に感じながら、思考してみてはいかがでしょうか。

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