「広い宇宙には膨大な数の星があるのだから、地球以外にも文明が存在してもおかしくないはず」
「そのうちのいくつかは地球に来ていてもおかしくないのに、いまだに地球外文明との接触がないのはなぜなのか?」
これは、イタリアの物理学者であるエンリコ・フェルミが1950年に指摘した矛盾であり、
これをフェルミのパラドックスといいます。
フェルミは、同僚と昼食をとりながら、こう言ったといいます。
「彼らはいったいどこにいるのだろうか?」
宇宙人はどこにいるんでしょうか?
わたしも知りたいです!
この記事では、フェルミのパラドックスの概要と、「なぜ我々は地球外文明に接触していないのか?」に対するいくつかの仮説を紹介・解説します。
フェルミのパラドックスとは
天の川銀河には 2000億個 の恒星があります。
恒星が1つ以上の惑星をもつ割合は65%のため、惑星は 1300億個 存在すると試算できます。
また、恒星の持つ惑星の1つ程度は、地球に似た惑星である可能性が高いのです。
つまり、地球に似た惑星は天の川銀河に 1300億個 存在すると考えられます。
こんなに地球に似た惑星があってもいまだに人類が宇宙人に接触していないのは、矛盾のように感じられます。
さらに、銀河系が誕生して約130億年、地球が誕生してから40億年が経っています。
しかし、人類の歴史は数百万年程度、化学が進歩したのはほんのここ数百年の出来事です。
もし、地球より数万〜数億万年前に宇宙人が誕生していれば、地球人をはるかに超える知的生命体が存在するはずであり、そして、地球人と接していると考えることが出来ます。
ですが、私たち地球人は、いまだ宇宙人に出会えていません。
以上が、フェルミのパラドックスの概要です。
地球外文明の数を試算できる?「ドレイクの公式」
フェルミの指摘を受けて、1961年に天文学者フランク・ドレイクが、
「天の川銀河に存在する、通信可能な知的文明の数N」を試算する方程式、「ドレイク方程式」を考案しました。
名前 | 定義 |
人類がいる銀河系の中で 1 年間に誕生する星 ( 恒星 ) の数 | |
ひとつの恒星が惑星系を持つ割合 ( 確率 ) | |
ひとつの恒星系が持つ、生命の存在が可能となる状態の惑星の平均数 | |
生命の存在が可能となる状態の惑星において、生命が実際に発生する割合 ( 確率 ) | |
発生した生命が知的なレベルまで進化する割合 ( 確率 ) | |
知的なレベルになった生命体が星間通信を行う場合 | |
知的生命体による技術文明が通信をする状態にある期間 ( 技術文明の存続期間 ) |
ドレイクがこの方程式から導き出した数値は「10」です。
えっ!私たちのいる銀河に、
私たち以外の文明が10個もあるかもしれないってことですか?
希望が持てますね!
計算上はそうなります!
ただし、この値が妥当であるかは、
意見が分かれるところでもあります。
アメリカの天文学者であるカール・セーガンは、ドレイクのこの方程式について、
「一番不確定なのは、L(電波通信技術を持つ文明が継続する時間)である」と指摘しました。
これは、L の値をなんと置くかによって、答えが大きく変わってしまうためです。
ドレイクはこのLの値を1万年として計算しましたが、100~1000年くらいと言う学者も、何万年や何百万年と仮定することも出来ると言う学者もいたようです。
Lを仮に100年とすると答えは0.1、1万年とすると10、100万年とすると1000になってしまい、かなりのブレが出てしまうことが分かります。
しかし、この方程式を使うと地球外文明が存在する可能性は0にはならないのです。
ブレがあるとはいえ、答えが「0」にならないことは、地球外文明や生命体の存在を推測する上でのよりどころになるでしょう。
フェルミのパラドックスに対する仮説
フェルミのパラドックスに対する仮説を紹介します。
仮説は、「地球外文明は存在する」とするものと「地球外文明は存在しない」とする2つに大きく分けることが出来ます。
- 地球外文明は存在しない
- 地球外生命は存在するが、なんらかの理由により接触がない、接触があっても認知できていない
地球外文明は存在しない説(レアアース仮説)
「地球は、生命誕生の条件が揃っている、宇宙でもまれに見る恵まれた惑星であり、
地球で生命が誕生したのは極めてまれな現象である」
「そのため、地球以外に文明が誕生する可能性は0ではないが、今のところ人類が1番目である、
もしくは生命がいても人類よりも低いレベルの進化にとどまっている」という説です。
これをレアアース仮説といい、ドレイクの方程式による試算を「生命誕生の条件のそろった銀河はもっと少ない」「仮定する値はもっと低いものであるはず」とする説です。
天文学者のフレッド・ホイルは、生命が偶然生まれる確率を 1040,000分の1 と計算しました。
ちょっと数が小さすぎて?
イメージが湧きません…
この確率は、「ゴミ処理場に突風が吹いて、部品が自然に組み合わさりジャンボジェットが完成するぐらいの確率」と表現されることもあります。
この確率がどのくらい低いのか、0.000・・・1 の表記に直したものを見て感じて頂きましょう。
この数字、全部0ですか?
はい。ちなみにこれで全部ではなく、この桁数の2.5倍くらい0が続き、最後に1がきます。
もうほとんど0と言ってもいいくらいの奇跡ですね。
グレートフィルター説
「地球外生命は発生しているが、人類やその他の文明を観測したり接触する前に、それを不可能にするような何かしらのフィルター、障壁が存在している」という説です。
この障壁、フィルターのことをグレートフィルターといいます。
ですが、このフィルターが何なのかは分からず、あくまでもそのようなフィルターが存在するのでは?という仮説にすぎません。
また、このグレートフィルター説が正しかったとして、人類がグレートフィルターを通過する前か後かも分かりません。
えっと…グレートフィルターが何かは分からないし、私たちがそれを通ってきているか、いないかも分からないってどういうことでしょうか…?
グレートフィルターは、生命や文明の進化する過程で突破するのがとても難しい壁だと思ってください。もう少し分かりやすく、説明します。
生命や文明が進化する過程を、レベルで表現してみます。
生命の誕生をLv.1、生命や文明の発達の限界をLv.100として、私たち人類は現在、Lv.50まで進化していると仮定します。
グレートフィルターが、進化過程のLv.30のところにあったとしましょう。
人類は、現在Lv.50なのでグレートフィルターを既に突破しています。
人類が今まで通過してきた進化過程でも特に高度で飛躍的だったもの、例えば「生命の誕生」「単細胞生物から多細胞生物への進化」「知的生命体への進化」などのどれかが、グレートフィルターであった可能性があると考えることが出来ます。
地球外生命も誕生はしていますが、Lv.30まで来るとほとんどの生命がそのフィルターを突破できず、そのまま進化できずにLv.30に留まるか、進化できないまま滅んでしまいます。
そのため、グレートフィルターを突破できた我々人類は宇宙の中でも進化の進んだ生命体である可能性が高くなり、地球外文明に接触できる可能性は低くなります。
次に、グレートフィルターが、進化過程のLv.70のところにあったとしましょう。
人類は、現在Lv.50なのでグレートフィルターにこれから到達することになります。
そしてグレートフィルターに到達するとそれを突破できず、地球外文明に接触するよりも先に人類の滅亡が来てしまう可能性が高いのです。
地球外文明も、これから人類が到達するグレートフィルターに同じように阻まれて、人類に接触する前に滅亡してしまっているということになります。
この場合、何かしらの要因でこれから人類が滅んでしまう未来が待っていると思うと、ちょっと怖いですね…
地球外文明側も地球や人類を観測出来ていない説
地球外文明は存在するが、地球や人類を観測できていないため、接触のためのアプローチをそもそも試みていないという説です。
地球人に物理的に接触できない説
距離などの問題で、地球人に物理的に接触出来ていないという説です。
太陽系から一番近い恒星でも、最低4光年(光の速さで4光年以上)かかり、距離的にかなり遠いことが分かります。
光速を超える移動技術を宇宙人がもっていれば接触してきている可能性がありますが、接触がないということは現時点で技術的に達成不可能だということかもしれません。
地球人に意図的に接触していない説
宇宙人は地球や人類のことは観測しているが、何らかの意図によって接触してきていないという説です。
接触しない意図については、さらにいくつかの説があります。
・地球や人類はあくまで観察対象であり、干渉してはいけないという決まりがある(動物園仮説、保護区仮説とも)
・地球は文明の発展が遅く、レベルが違いすぎるため、接触する意味や利益がない
・地球外文明では精神転送・シュミレーテッドリアリティなどの技術が発達しているため、現実世界に興味がない
・接触することで人類に混乱をきたす可能性があるため
・接触することで自分の文明が滅ぶ可能性があるため
また、「宇宙人は引っ込み思案なのではないか」と、大真面目に考える学者もいます。
人類には観測できない形をしている
地球外生命は既に地球に来ているが、人間には観測で出来ない形や物質であるという説です。
ダークマターで構成されている、超ミクロ、意識生命体、ケイ素生物などの仮説があります。
ミクロの世界のことは、5%しかわかっていないといわれているので、その未知の95%に、地球外生命がいる可能性も否定できません。
その他の仮説
- 別の次元にいる(五次元など)
- 各国政府が隠蔽していて、調査を試みる者には妨害が加えられる(メンインブラック)
- 過去に宇宙人が到達していて、現在の地球の生命こそ宇宙人が起源である
まとめ
私たちはまだ地球外文明を見つけていませんが、「それはおかしなことではないか?」と考えた学者がいたのですね。
これは、「確率的には地球外文明と接触しているべきではないか?」と言い換えることも出来ます。
地球外生命や、地球外文明は存在するべき。だけど私たちはまだ出くわしていない。
そしてこのパラドックスに対する仮説を見ると、地球外文明の存在は、決して人間の希望的観測ということでもないのではないかと思わせられます。
コメント