天体の中には自ら光り輝く「恒星」がありますが、恒星にも種類があり、最小サイズの恒星が赤色矮星(せきしょくわいせい)と呼ばれます。
小さな恒星ですが、銀河系にある恒星の約75%は赤色矮星と考えられています。
銀河系の主役とも言える赤色矮星とはどんな恒星なのか?
太陽との違いは何か?
今回は、赤色矮星(せきしょくわいせい)の特徴を詳しく解説します。
赤色矮星(せきしょくわいせい)とは?
恒星の中でも、特に小型&軽量&低温の恒星を「赤色矮星」と呼びます。
恒星の中で最小サイズに分類され、中には木星とほとんど同じ大きさの赤色矮星もあります。
中心部にかかる圧力も低いため、核融合の速度が遅く温度&光度も低めです。
低温で見た目が赤く見える事から「赤色」の名が付いています。
矮星の「矮」の意味
矮(わい)は「準ずる」「小さい」と言った意味があります。
赤色矮星は恒星の中でも特に小さいので、矮星と呼ばれているのです。
銀河系の恒星の約75%を占める
銀河系には2,000〜4,000億個もの恒星が存在しますが、その内の約75%は赤色矮星と考えられています。
太陽に近い恒星60個のうち50個は赤色矮星であり、太陽系から最も近くにある恒星「プロキシマ・ケンタウリ」も赤色矮星です。
銀河系内では、赤色矮星はごく一般的でありふれた恒星と言えるのです。
表面温度&明るさ
恒星自体の明るさ | 地球から見た明るさ | 表面温度 | |
太陽 | 1 | -26.74等級 | 約5,800℃ |
プロキシマ・ケンタウリ | 太陽の0.17% | 11等級 | 約3,000℃ |
グリーゼ887 (ラカーユ9352) | 太陽の0.036% | 7.34等級 | 約3,400℃ |
けんびきょう座AX星 (ラカーユ8760) | 太陽の0.029% | 6.68等級 | 3,700℃ |
トラピスト-1 | 太陽の0.05% | 18.8等級 | 約2,300℃ |
ラランド21185 | 太陽の0.56% | 7.52等級 | 約3,500℃ |
表を見てわかる通り、赤色矮星はとても暗く低温の恒星です。
赤色矮星って想像以上に暗いんですね。
等級とは
地球から見える星の明るさを表す指標で、数値が低いほど明るく見えます。
人間が肉眼で見える明るさは6等級までと言われ、それ以上の等級は望遠鏡を使わないと観測が困難です。
地球から最も近い赤色矮星プロキシマ・ケンタウリでも11等級とかなり暗め。
これほど暗いと、夜空に見える赤色矮星の数も少ないんですか?
少ないどころか、地球から肉眼で観測できる赤色矮星は1つも無いと思って下さい。
地球から肉眼で見れない?
赤色矮星が発する光はごく僅かなので、地球から肉眼で観測可能な赤色矮星は存在しません。
夜空に輝く4,000〜6,000個の恒星は、全て赤色矮星以外の恒星なのです。
もし、地球から赤色矮星をはっきり観測するには望遠鏡を使う必要があります。
銀河系の恒星のほとんどが赤色矮星なのに、肉眼で見れる赤色矮星が1つも無いって不思議な話ですね?
確かにパラドックスみたいですよね。
「けんびきょう座AX星」ならギリギリ見れる?
6.7等級と比較的明るい赤色矮星「けんびきょう座AX星(ラカーユ8760)」なら
標高の高い地域、月が無い真っ暗な夜空、視力がとても良いなどの条件が揃えばギリギリ肉眼で観測できると言われています。
しかし、それでも「何とか見れる」程度なので、肉眼ではっきり観測できる赤色矮星は存在しないと言って良いでしょう。
他の恒星と大きさを比較
赤色矮星ってどれぐらい小さいのでしょうか?
では、他の恒星と赤色矮星の大きさ(直径)を比較してみましょう。
大きさ(直径) | 概要 | |
プロキシマ・ケンタウリ (赤色矮星) | 約19万8,000 km (太陽の0.14倍) | 太陽から一番近い恒星 |
トラピスト1 (赤色矮星) | 約16万6,000 km (太陽の0.12倍) | 特に規模の小さい 超低温矮星 |
太陽 (G型主系列星) | 約139万2,000 km | G型主系列星 |
おおいぬ座VY星 | 約19億 km (太陽の約1,420倍) | 赤色超巨星 |
RMC 136a1 (O型主系列星) | 約4,200万 km (太陽の約30倍) | 観測できる恒星の中で質量、温度、光度が最大 |
なるほど、他の恒星と比べると赤色矮星って超ミニサイズに感じます。
赤色矮星系の惑星に生命はいる?
宇宙生命は、恒星の周りを公転する惑星に誕生すると考えられています。
太陽と同様、赤色矮星を公転する惑星にも生命が存在する可能性があるのです。
しかし、赤色矮星系惑星の環境は地球とは大きく異なります。
ここでは、赤色矮星系の生命に関して詳しく解説します。
生命誕生のチャンスはある?
赤色矮星の寿命は太陽に比べてとても長く、太陽の寿命は約100億年に対して、赤色矮星の寿命は平均1,000億年もあります。
惑星に長期間光と熱エネルギーを与え続ければ、生命誕生のチャンスも高くなります。
では、赤色矮星系の惑星は生命が誕生しやすいって考えて良いのでしょうか?
そう思いたいところですが、ある理由で生命誕生には厳しい環境になっている可能性があるのです。
潮汐ロックの脅威
赤色矮星を公転する近くの惑星は潮汐ロックされている可能性が高いです。
潮汐ロック(固定)とは?
ある天体がある天体に同じ面を向けて公転している状態で、自転と公転の同期とも呼ばれます。
主星から距離が近い天体は、主星の潮汐力(引力)の影響を強く受けることで潮汐ロックが発生します。
潮汐ロックを受けた天体は、常に同じ面を主星に向けているので「片面は永遠の昼」「もう片面は永遠の夜」になってしまうのです。
では、片側が常に日光が当たっているとどうなると思いますか?
日向の地域は灼熱、日陰の地域が極寒になってしまいますよね?
結果、赤色矮星系の惑星は灼熱&極寒の惑星になっている可能性があるのです。
恒星風の脅威
赤色矮星系におけるもう1つの脅威が「恒星風」です。
恒星風とは?
恒星表面の発生したガスの流れを「恒星風」と呼びます。
(太陽だと太陽風と呼ばれる)
恒星風から放出されるガスは周囲の惑星に影響を及ぼします。
恒星風(太陽風)は太陽でも発生していますが、赤色矮星は重力が弱いため、フレアが放出やされやすい特徴があるのです。
さらに、赤色矮星系のハビタブルゾーンは太陽系と比べてかなり近いので、ハビタブルゾーンの惑星は常に恒星風の脅威にさらされている可能性があります。
恒星風の脅威とは?
- 大気が剥ぎ取られる
- 水が宇宙空空間に流出する
- 放射線で地表が汚染される
↑どれも生命誕生の弊害になる物ばかりです。
では、赤色矮星系の惑星に生命は存在しないのでしょうか?
いえ、トワイライトゾーンならば希望はあります。
トワイライトゾーンは快適?
トワイライトゾーンとは?
地球で例えると、日の出直前&日没直後の時刻です。
日光はギリギリ当たりませんが熱エネルギーが届いているので、ある程度明るくそして暖かい。
また、ギリギリ恒星の反対側を向いているので、恒星風の脅威も少ないと思われます。
結果、トワイライトゾーンのみ快適な環境になっている可能性があるのです。
赤色矮星系で生命存在の可能性がある惑星は以下の通り。
赤色矮星系で生命がいるかもしれない惑星
上記以外にも、生命存在の可能性がある赤色矮星系の惑星は存在します。
こんなにあるんだったら、どこかの惑星に生命がいそうですね!
赤色矮星の寿命とその一生
ここでは、赤色矮星の一生をご紹介します。
ちなみに、恒星の寿命は「光を発しなくなる=核融合反応が終わるタイミング」だと思って下さい。
まずは「青色矮星」になる
赤色矮星の主成分である水素の大部分を使い果たすと「青色矮星(せいしょくわいせい)」となります。
青色矮星は赤色矮星の進化段階の1つであり、晩年の赤色矮星と言える姿です。
青色矮星は、かろうじてエネルギーを発しているので、恒星としては寿命を迎えていません。
赤色矮星の最後の輝きって感じですかね?
青色矮星は存在しない?
赤色矮星が青色矮星になるまでの期間は、現在の宇宙年齢より長いと考えられています。
そのため、青色矮星は仮説上の天体で、この宇宙にはまだ存在しない可能性が高いです。
次に「白色矮星」になる
青色矮星に残された僅かな水素も使い果たしてしまうと、核融合反応が終了してエネルギーを生み出さなくなります。
恒星がエネルギーを生み出さなくなると「白色矮星(はくしょくわいせい)」になります。
白色矮星は表面温度が高く光り輝いていますが、これは恒星だった頃の予熱でありエネルギーを生み出していません。
エネルギーを発していないので、白色矮星は「死んだ星」「恒星の残骸」とも呼ばれます。
エネルギーを発していないから、赤色矮星の寿命は白色矮星になるタイミングって事ですね?
白色矮星は存在する
赤色矮星より大きな恒星でも白色矮星になる場合があるので、白色矮星はいくつか発見されています。
太陽もいずれ白色矮星になると考えられています。
最後に「黒色矮星」になる
白色矮星の予熱も無くなり完全に冷えると「黒色矮星(こくしょくわいせい)」になります。
熱を発していないので、黒色矮星は電磁波による観測が不可能です。
黒色矮星もこの宇宙に存在しない可能性が高いです。
ちなみに、赤色矮星の平均寿命は1,000億年もあります。
(太陽の寿命は約100億年)
え!そんなに長いんですか?
赤色矮星が長寿な理由
赤色矮星の寿命が長い理由は、主成分の水素が全体で対流しているからです。
大きな恒星は核付近の水素しか核融合を起こさず、使用する水素が限られている分寿命も短めです。
しかし、赤色矮星は恒星全体の水素が核融合反応に使われるので、長期間輝き続ける事ができるのです。
また、赤色矮星は低質量で核融合反応が遅く、放射するエネルギーが少ない点も長く輝き続ける事が理由の1つです。
特徴的な「赤色矮星」3選
赤色矮星って沢山あるみたいですけど、何か特徴的で面白い赤色矮星を教えて下さい。
では、個人的に注目度の高い赤色矮星を3つご紹介します。
プロキシマ・ケンタウリ
プロキシマ・ケンタウリ | 太陽 | |
発見日 | 1915年 | 有史以前 |
恒星の区分 | 赤色矮星 | G型主系列星 |
直径 | 約19万8,000 km | 約1,392,700 km |
質量 | 太陽の12.3% | 1.989 × 10^30 kg |
表面温度 | 約3,000℃ | 約5,800℃ |
光度 | 太陽の0.17% | 1 |
惑星の数 | 2 | 8 |
プロキシマ・ケンタウリは地球から約4.24光年離れていて、太陽を覗くと地球から最も近くにある恒星です。
三重連星系であるケンタウルス座α星の1つで赤色矮星に分類されます。
プロキシマ・ケンタウリを公転する系外惑星プロキシマ・ケンタウリbは、ハビタブルゾーンにあるので、生命が存在する可能性があります。
また、地球から近い位置にあるので、人類の移住先候補とも呼ばれています。
しかし、フレア(恒星風)が頻発している恒星なので、周囲の惑星が放射線で汚染されている可能性があります。
トラピスト-1
トラピスト–1 | 太陽 | |
発見日 | 1999年 | 有史以前 |
恒星の区分 | 赤色矮星 (超低温矮星) | G型主系列星 |
直径 | 約166,000 km | 約1,392,700 km |
質量 | 太陽の約9% | 1.989 × 10^30 kg |
表面温度 | 約2,300℃ | 約5,800℃ |
光度 | 太陽の0.05% | 1 |
惑星の数 | 7〜8 | 8 |
トラピスト-1は地球からみずがめ座の方法、約40.5光年離れた位置に存在する赤色矮星です。
赤色矮星の中でも特に小型で、表面温度も低いことから「超低温矮星」とも呼ばれています。
直径も約166,000 kmしかなく、これは木星の直径約139,820 kmを少し上回る程度です。
かなり小型の恒星ですが、これまでに惑星が7〜8個も発見されていて、その内4つの惑星に生命存在の可能性があります。
バーナード星
バーナード星 | 太陽 | |
発見日 | 1916年 | 有史以前 |
恒星の区分 | 赤色矮星 | G型主系列星 |
直径 | 約 272,710 km | 約1,392,700 km |
質量 | 太陽の約16% | 1.989 × 10^30 kg |
表面温度 | 約2,800℃ | 約5,800℃ |
光度 | 太陽の0.04% | 1 |
惑星の数 | 1 | 8 |
バーナード星は地球からへびつかい座の方法、約6光年先に存在する赤色矮星です。
発見されている天体の中で最大の固有運動を持つ事で有名です。
バーナード星は太陽系に接近していて、今から約1万年後には地球から約3.75光年まで接近し、プロキシマ・ケンタウリより近い恒星になると考えられています。
まとめ
赤色矮星と太陽って同じ恒星なのに、異なる点が沢山あって面白かったです。
今後の観測&調査によって、赤色矮星はどんどん発見されていくと思われます。
そして、地球外生命が初めて発見される日が来るならば、その天体の主星は赤色矮星かもしれません。
何か面白い赤色矮星が発見されたらぜひ教えて下さい!
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