私たち人類は、なぜ今まで宇宙人に会えていないのだろうか。
私たち人類が抱き続けている疑問です。
その疑問に対する仮説の一つに、「グレートフィルター仮説」というものがあります。
中身を知ると、実は少し恐ろしくもあるこの仮説。
この記事では、そんなグレートフィルター仮説について解説します。
グレートフィルターとは?
私たちが地球外生命に出会えていない理由の一つとして考えられている説であり、
地球外生命に接触できないような状況を作っている何らかの障壁のことです。
この概念は、経済学者のロビン・ハンソンによって書かれた論文で提唱されました。
フェルミのパラドックスについて
宇宙には無数の惑星が存在していて、その中には地球と同じように生命が誕生してもおかしくない条件のそろった惑星もあるはずです。
なのに、なぜ私たちは地球外生命に出会っていないのでしょうか。
この、地球外生命がいる可能性の高さと、私たち人類が地球外生命に会っていないこの矛盾を、フェルミのパラドックスといいます。
そして、このフェルミのパラドックスが生じている理由の一つとして、グレートフィルターという存在が考えられているのです。
人類がいまだに地球外生命に接触していないのは、ほかの文明に接触できるほどの高度な文明に発達するまえにグレートフィルターという壁に阻まれてしまい、ほかの文明への接触を不可能にしているからではないか、とする説が、グレートフィルター仮説です。
グレートフィルター仮説は「フェルミのパラドックス」の一部です。フェルミのパラドックスについて解説した記事もあるので、良ければご覧ください。
カルダシェフスケールについて
グレートフィルターの話をする上では「文明の発達のレベル」がとても大事なポイントになるので、先にそのお話をします。
宇宙における生命や文化の発達を測る指標として、カルダシェフスケールというものがあります。
1960年代に、旧ソ連の天文学者ニコライ・カルダシェフが考案しました。
スケールはⅠ~Ⅲまであり、それぞれ次のように定義されています。
- Ⅰ:惑星文明。その惑星で利用可能なすべてのエネルギーを使用及び制御できる。
- Ⅱ:恒星文明。恒星系の規模でエネルギーを使用及び制御できる。
- Ⅲ:銀河文明。銀河全体の規模でエネルギーを制御できる。
スケールⅢのレベルに到達すると銀河系の規模で惑星間を自由に行き来することができ、ほかの生命や文明に容易に接触できるようになります。
宇宙人に簡単に会えるようになるんですか?
そうです。もしかしたら隣の家に遊びに行くくらいの感覚になるかもしれませんね!
しかし、私たち人類は、このスケールのⅠにも達していません。
スケールⅠに達していないということは、この定義によると、私たち人類からのアプローチで地球外文明に接触できる可能性はかなり低いということです。
では、人類は地球外文明からのアプローチを待たなければいけないということになりますが、地球外生命からの接触はまだありません。
私たち人類と容易に接触できるほどの高度な技術をもつ、スケールⅢのレベルまで達した生命・文明はいないのではないか、ということです。
宇宙の歴史はとても長いはず。
人類よりもはるか昔に誕生してこれまで進化を続け、現在スケールⅢの技術をもつ文明があってもおかしくないように感じられます。
なのに、そんな文明が存在しないのはなぜか?
そこで、グレートフィルターの存在が考えられたのです。
ある物理学者によると、私たち人類はあと100~200年でスケールⅠ、
数千年でスケールⅡ、
10万~100万年でスケールⅢに達する可能性があるといいます。
グレートフィルターの問題点とは?
この説を唱えたロビン・ハンソンによると、スケールⅢに発展するまでの過程は次のようなものです。
1 | 生命誕生の条件がそろった惑星の誕生 |
2 | 生命分子の発生(DNAなどの遺伝子情報) |
3 | 単純な構造の単細胞生物の誕生 |
4 | 複雑な構造の多細胞生物の誕生 |
5 | 生命が生殖能力を持つ |
6 | 生命が多細胞生物に進化する |
7 | 生命が道具を使うようになる |
8 | さらなる文明の進化 |
9 | 自由に星間移動ができる(カルダシェフスケールⅢ) |
私たち人類は、この過程の8にいます。
そして問題となるのは、人類がこのグレートフィルターをすでに突破しているのかどうか?ということです。
人類がグレートフィルターを突破している場合
人類が通ってきた過去の発展の過程にグレートフィルターがあった場合を考えます。
私たち人類の文明レベルまで到達することがそもそも難しいということになります。
人類は、宇宙で一番早くグレートフィルターを乗り越えたか、早い段階でフィルターを超えていて、人類は宇宙の中でもかなり進んだ文明だということです。
人類がこれからグレートフィルターに到達する場合
人類が通ってきた過去の進化の過程にグレートフィルターがなく、これから到達する場合はどうでしょうか?
私たち人類の文明レベルまで発展することは容易であると考えられ、多くの文明が現在の人類のレベルまで発展しているはずです。
ですが、私たち人類に接触してくる地球外文明がないということは、ステップ9まで進化している文明がないということ。
つまり、生命・文明はグレートフィルターに阻まれて、ステップ9までは進化し得ないということです。
そして我々人類で考えると、いま突破していないグレートフィルターにこれから衝突するということで、それは人類が地球外生命体に接触することなく滅亡してしまうということを示しています。
グレートフィルターを考えると、宇宙人の発見は悪いニュースになる?
宇宙人の発見なんてとてもロマンがあってワクワクする話だと思うのですが、違うのですか?
そうなのです。火星で微生物が発見されたと考えてみましょう。
火星に、微生物がいたということは、この生命体はステップ6の段階にいることが分かります。
同じ恒星系のなか、つまりこれだけ近くに多細胞生物が存在しているということは、2~6のステップに進化することはとても簡単なことである可能性が高くなります。
つまり、グレートフィルターは2~6の間にはない可能性が高いのです。
グレートフィルターは1、7、8、9の可能性が高く、人類がこれからグレートフィルターに直面して滅亡する可能性が高まるのです。
まとめ
宇宙人や地球外生命が見つかることはいいことだとばかり思っていましたが、場合によっては人類がこれから滅亡することを言い表していることにもなるのですね…
そうなのです。少し恐ろしい話ではありますが、それでもなお人類が地球外生命体への接触を試みるのは、好奇心を駆り立てるとてつもない魅力が、宇宙にはあるからなのだと思います。
コメント