長いこと、地球上で一番硬い物質として知られてきたダイヤモンド。
そのダイヤモンドよりも硬いとされている物質があるのをご存じでしょうか?
ダイヤモンドより硬い物質は現在2つ確認されています。
このうちの1つの物質は、隕石が地球に衝突するときの摩擦や熱によって生まれます。
今回はその物質、ロンズデーライトについて解説します。
ロンズデーライトとは?
ロンズデーライトは炭素からなる結晶です。
ロンズデーライトという名前は、学者のキャスリーン・ロンズデールに由来しています。
ダイヤモンドも炭素からできているので材料は同じなのですが、構造が違います。
ダイヤモンドは八面体や十二面体の構造をしているのに対して、ロンズデーライトは六方晶。
ロンズデーライトになる前の物質はグラファイトといって、これも炭素からできている物質です。
どれも、炭素が規則的に並んだ構造をしています。
a:ダイヤモンドの構造
b:グラファイトの構造
c:ロンズデーライトの構造
化学式(構成元素) | 結晶の構造 | モース硬度 | |
ダイヤモンド | C | 八面体や十二面体 | 10 |
グラファイト | C | 六方晶 | 1-2 |
ロンズデーライト | C | 六方晶、板状 | 後述 |
ちなみに…
ダイヤモンドより硬い物質のもう一つは、ウルツァイトいう物質です。
高温かつ高圧の火山の噴火によって生成する物質で、ダイヤモンドに似た化学構造をしています。
ダイヤモンドよりも、モース硬度で18%ほど硬いという実験結果もあるそうです。
ロンズデーライトはどうやって作られる?
ロンズデーライトは、隕石が地球に衝突する際、含まれているグラファイトが熱や摩擦で変化してできます。
1967年に初めて発見され、数十〜数百万年前にアメリカのアリゾナ州に落ちたとされる隕石の中から見つかりました。
大きさは、顕微鏡でしか見えないほどで、0.1mm以上の大きさのものは現在見つかっていません。
そもそも「硬い」とは?
ロンズデーライトは、ダイヤモンドよりもモース硬度で58%硬いと推測されています。
モース硬度ってなんでしょうか?
簡単に言うと、「引っ搔いた時の傷つきにくさ」です。
モース硬度は1から10で表され、数が小さいほど柔らかく、大きいほど硬くなります。
人間の爪の硬さはモース硬度2ほど。
モース硬度での10は、今まで一番硬いとされてきた物質、ダイヤモンドの硬さが割り当てられています。
モース硬度 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
標準鉱物 | 滑石 | 石膏 | 方解石 | 蛍石 | 燐灰石 | 正長石 | 石英 | トパーズ | コランダム | ダイヤモンド |
現在見つかっているロンズデーライトの硬度は最大でも8とされていますが、これは不純物や構造の欠陥によるものと考えられています。
もし純粋なロンズデーライトを発見、あるいは作ることができれば、そのモース硬度は10を超えると推測されています。
純粋なロンズデーライトがダイヤモンドよりも硬ければ、モース硬度の定義を変える、もしくは10よりも大きい値を作らなければいけなくなるかもしれません。
モース硬度は「引っ掻いた時の傷つきにくさ」であり、「叩いた時の壊れにくさ」ではありません。
ダイヤモンドやロンズデーライトであっても、衝撃にはさほど強くありません。
ロンズデーライトの展望
2016年、オーストラリア国立大学の研究チームが、ナノサイズのロンズデーライトの結晶を作ることに成功しました。
ダイヤモンドで物質を挟み、高温、高圧をかけることでロンズデーライトを作ります。
ダイヤモンドを実験で使うなんて、贅沢ですね…!
それまで800℃程度必要だった温度を、400℃に半減させてロンズデーライトを作りだすことに成功しました。
ロンズデーライトの発見から半世紀以上が経っていますが、その生成の難しさや希少さ故、物性には多くの謎が残されています。
もしロンズデーライトが容易に作られるようになってその特性の研究が進めば、工業系技術の発達に大いに貢献するのではないでしょうか。
まとめ
その起源を知ると、宇宙のロマンをも感じさせてくれる鉱石、ロンズデーライト。
ロンズデーライトがもっと身近なものになれば、私たちの生活はより発展していくことでしょう。
ロンズデーライトの、今後の展開に期待ですね。
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