なぜ、月は地球に対して常に同じ面を向けているのか?
それは、月が地球に潮汐ロック(固定)されているから。
しかし、そもそも潮汐ロックを知らない人もいるはず。
今回は、宇宙ではありふれた現状である「潮汐ロック」をご紹介します。
原理&条件は意外と単純なので、潮汐ロックの詳細をイラスト付きで解説します。
自転と公転の同期「潮汐ロック」とは?
潮汐ロック(固定)とは、ある天体がある天体に同じ面を向けて公転している状態を指します。
潮汐ロックの最も身近なケースは、地球と月の関係があります。
月の自転周期は約27.32日で、公転周期も約27.32日と完全に同じ(同期)状態。
自転と公転が同期で潮汐ロックされると、月は地球に対して常に同じ面を向けている事になります。
月は地球に対して常に表面を向けていて、地球からは月の裏側を見る事はできません。
地球から潮汐ロックされていないと、月の裏側を見る事ができるんですか?
その通りです。実際に、潮汐ロックされていない例を見てみましょう。
潮汐ロックされていないとどうなる?
衛星の自転&公転共に反時計回りとします。
衛星が惑星の周りを4分の1周すると、衛星は惑星に斜めの面を向けます。
4分の2周すると真横の面を向けて、4分の4周で惑星に対して衛星の裏側を向けます。
潮汐ロックされた天体は自転しなくなるんですね?
いえ、潮汐ロックされると自転していないと思っていますが、月はしっかり自転しています。
自転もしている
例として、月が自転していないとどうなるか見てみましょう。
月が自転していないとどうなる?
A地点は地球に向いている状態で地球の周りを4分の1周します。
すると、A地点は地球から見て横側に移動します。
さらに、地球の周りを4分の2周すると、A地点は地球の反対側を向いてしまうので見る事ができなくなってしまいます。
月は自転しているからこそ、地球に対して常に同じ面を向けているって事なんですね。
その通りです。
潮汐ロックされた天体は大回りに自転している感じですね?
そのような見方もできますね。
潮汐ロックの原理&発生条件とは?
そもそも、なぜ潮汐ロックされる天体があるのでしょうか?
では、潮汐ロックが発生する条件や原理をご紹介します。
「惑星」と「衛星」の関係で解説
この項目では、潮汐ロックする側を「惑星」潮汐ロックされる側を「衛星」で解説します。
実際は、惑星&衛星以外の天体同士でも潮汐ロックが発生しています。
天体を引っ張る力「潮汐力」
潮汐ロックの原理を知るために、まずは「潮汐力」について解説させて頂きます。
潮汐力とは?
天体の重力によって発生する「引っ張る力」を潮汐力と呼びます。
潮汐力の有名な例は、月の重力で海面の水位が変わる「潮の満ち引き」があります。
潮の満ち引きは、月の潮汐力(引力)によって海面が引っ張られて、地域によって水位が変化する現象です。
惑星から近いほど潮汐力は強くなる
主星(惑星)から距離の近い衛星ほど潮汐力は強く働きます。
↑「磁力」で例えると、磁石から近い鉄球ほど磁力で引っ張られる力が強くなる理屈と同じです。
天体の「重心」は本来真ん中にある
天体の重心とは?
球体の形をした天体の重心は真ん中にあります。
これは、天体の重力が中心部分に集まるからです。
しかし、外部からの力を受けると天体の重心はズレてしまいます。
では、真ん中にある重心が下に引っ張られるとどうなると思いますか?
重心は下側に移動しますよね?
潮汐力で引っ張られると
重心が下に移動する
強い潮汐力を受けた天体は、重心が真ん中からズレてしまいます。
ズレる位置は惑星の潮汐力で引っ張られている側、つまり「下側」になる訳です。
天体の重心が下側に移動すると潮汐ロックされるのです。
同じ面を向けて公転=潮汐ロック
衛星の重心が下側に移動すると、衛星は常に惑星に対して同じ面を向けます。
そうなると、自転と公転の同期した「潮汐ロック」された状態になる訳です。
潮汐ロックされた天体は重心が下側になっているんですね。
潮汐ロックは「起き上がり小法師」によく例えられます。
衛星が何かの力で横面を向けてしまっても、重心が下にある限り元に戻るって事ですね。
その通りです。
お互いがロックされるケースとは?
潮汐ロックは主星(惑星)でも発生する現象で、実際に冥王星と衛星カロンは、お互い潮汐ロックされています。
天体同士の直径と質量(重さ)が近いと?
潮汐ロックは主星を公転する衛星に多く発生しますが、主星も衛星から潮汐ロックされるケースもあります。
これは、惑星と衛星の直径&質量が近いと、お互いの潮汐力によって重心が下側に移動するからです。
その他、連星や質量が近い天体同士も、お互いが潮汐ロックされていると考えられています。
潮汐ロックされた系外惑星に生命はいる?
太陽系の惑星は全て潮汐ロックされていませんが
一部の系外惑星では、主星(恒星)から潮汐ロックされていると考えられています。
永遠の日向は楽園か?地獄か?
永遠の日向と日陰に分かれる
恒星の周りを公転する惑星が潮汐ロックされると、重心が下側の地域は常に恒星に同じ面を向けている事になります。
恒星に同じ面を向けていると言う事は、その地域は永遠の昼間となり、恒星とは反対側を向けている地域は永遠の夜となります。
潮汐ロックによって、永遠の日向&永遠の日陰となった惑星はどうなってしまうと思いますか?
永遠の日向は灼熱、永遠の日陰は極寒の世界になってしまいますよね?
赤色矮星系は潮汐ロックされやすい
銀河系の恒星の約75%を占める「赤色矮星」は小型で低温のため、ハビタブルゾーンが恒星からかなり近くになります。
恒星から近いほど潮汐力の影響を受けやすいので、ハビタブルゾーンの惑星は潮汐ロックされている可能性が高いのです。
そうなると、永遠の日向&永遠に日陰の環境になってしまい、生命が育むには過酷な環境になっているかもしれないのです。
つまり、潮汐ロックされている惑星には生命が存在しないのでしょうか?
いえ、トワイライトゾーンであればチャンスがあります。
トライライトゾーンなら快適?
トワイライトゾーンとは?
トワイライトゾーン(夕日の地域)とは、日向と日陰の狭間の地域を指しています。
潮汐ロックされている惑星でも、日向と日陰の狭間であるトワイライトゾーンならば暑すぎない&寒すぎない快適な環境になっているかもしれません。
系外惑星「ケプラー1649c」などは、トワイライトゾーンに生命がいる可能性があるのです。
トワイライトゾーン!ちょっと範囲は狭いけど、チャンスはあるんですね。
まとめ
結論、潮汐ロックは天体の重力で発生する「潮汐力」が大きく関係している。
ある天体がある天体の潮汐力で引っ張られて、重心が下側になると自転と公転が同期して潮汐ロックされる。
と言う事でした。
潮汐ロックの原理って意外とシンプルでしたけど、天体の重心や自転に影響を及ぼしてしまうから、実際はかなり大規模な現象ですよね。
確かに、潮汐ロックは宇宙規模で発生している現象ですからね。
ちなみに、本記事を読むと地球は月から潮汐力の影響を受けていないと思ってしまいますが、地球も月からも潮汐力の影響を受けています。
実際、月がなかったら地球の自転が高速回転してしまい、今より過酷な環境になってしまうと考えられています。
潮汐ロックや潮汐力って目に見えないところで、大きな影響を及ぼしているんですね。
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